テヨン age 最近サイト＆サウンドの昔のベストテン結果を手に入れ、A?ラングロワ、ディリス?パウエル、テリー?ラムゼイといった大御所クラスの投票結果ではチャップリンの主にミューチュアル社時代を中心とする作品群が非常に高く評価されていたのを知った。ラングロワは「チャップリンの1916年の作品」を映画史上の第一位に推していて、ディリス?パウエルも「チャップリンの勇敢」を一位にしている。アメリカの映画ジャーナリストの草分けであり名著「百万一夜」で有名なテリー?ラムゼイも「午前一夜」を三位にし、ドイツのアーキビストのエンノ?パタラスは第一位を「チャップリンのミューチュアル社時代の作品」としていた。1960年代以降になると、こうしたオールタイムのベストテンを選定する場合、チャップリン作品から選ばれるのは決まって「黄金狂時代」や「街の灯」などになってしまうのだが、それ以前（バザンやサドゥールが登場する前）の映画評論家たちの間では「チャップリンの全盛期はこの頃」というコンセンスが存在していたようだ。この10枚セットには、キーストン社時代（14年）、エッセネ社時代（15年）、ミューチュアル社時代（主に16，17年）の作品が収められていて、最初のキーストン社時代は代表的なものだけだが、このころの作品はトルソの趣が強く、監督が師匠のマック?セネットだったり、白面で登場したり、わき役での出演というものさえある。あとの二つの時期のフィルムに関してはコンプリートである。惜しむらくは、時代順ではなくバラバラに収録されている事で、使い勝手が非常に悪い（星を一つ減らしたのはこれとフィルムの状態のため）。子供のころ、こうしたチャップリンの短編（おそらくエッセネ社かミューチュアル社時代）がテレビでよく放送されていて、非常に面白かった記憶がある。ところが、やや物心ついて、意識的に映画を観ていこうとする時期に「モダンタイムズ」や「黄金狂時代」を鑑賞しても、なぜかその時の愉悦感が沸き上がってこない。　後年のものは社会的なテーマを詰め込みすぎたり、映画自体も長ったらしくなって、短い時間にアクションと笑いを凝縮したこの時期のものに比べていささかイージーになってしまったきらいがあるのかもしれない。70年代以降シネフィルの全盛期になって、チャップリン作品の評価が軒並み下がり、代わってサイレントアクションとしての徹底度で勝るキートンの作品群が聖典視されるようになった。しかし、ここでのチャップリン（当時二十代）もずいぶん危ないことをやっている。脚立に乗ったまま、背面から倒れたり、（これは別の俳優だが）水を満たしたマンホール大の穴に頭から飛び込んだり、少し間違うと事故になりかねないようなものばかりである。「午前一時」で何度も階段落ちをやるのも、階段に多少細工がしてあるとはいえ、あの回数をやるのはさすがだと思う。ロイドもたしか「用心無用」の撮影の時は、ちょっと前の撮影で指を２本失ってたので、「壁がよじ登りにくかったよ」とかこぼしていたが、サイレント時代のアクション俳優は今から考えると体を張っていたものだと思う。

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